えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

科学の発展の心理的な可能性の条件を探ろう(提案) バシュラール (2012) [1938]

  • バシュラール G. (1938=2012) 『科学的精神の形成』(及川馥訳 平凡社)

【目次】
第一章 認識論的障害の概念 本書のプラン ←いまここ
第二章 第一の障害 最初の経験
第五章 科学的認識の障害としての一元的かつプラグマティックな認識

1 〔「認識論的障害」とは〕

 この本は科学の進歩がいかなる心理的条件のもとで可能となったかを探求する。
問い:「精神はどのような障害を乗り越えて、今ある科学的認識にたどり着くのか?」
精神は、ある〔種の〕認識が持つ限界(認識論的障害)を乗り越え別の〔種の〕認識に到達する。従って、科学な認識を行うとき、精神の〔認識の〕あり方は激変しているのであって、科学は俗説とは絶対に相容れない。俗説は安定を好むが、そこから常に脱して新たな問いを立てるという「問題意識」こそ科学的精神のしるしである(「ものを創造する本能」vs「保守的本能」)。科学的精神を備えた人間は「変化しないことがつらく感じられる種類の人間」である。科学が単一化を求めると言うのも誤解で、むしろ科学は安易な単一化を行う哲学的因子(創造者の行為や自然の計画の単一さ)を排除することで発展した。

2 〔科学の歴史と科学教育における「認識論的障害」〕

 認識論研究者は、過去の誤りを裁くために、自分たちの時代に立ち、進歩した理性の観点から資料を判定しなくてはならない。誤って説明された事実は歴史家にはなお一つの「事実」だが、認識論研究者にとっては「障害」である。認識論研究者は歴史家のように文献を猟歩することは無いにせよ、〔著者の心理(認識)のあり方を探求することで〕、同時代に用いられる同じことばの背後にある、様々に異なる概念をとりだし、その発展や結合を示すことは、〔科学的思考の歴史にとっても価値を持つ〕。
 また科学教育においても、日常生活によって積み上げきた認識上の障害をひっくり返して(「当初抱いていた誤謬を精神分析して」)生徒の精神を変化させなければ、ただ実験を与えても理解は深まらない。その後さらに、知識を〔ただ事実として与えるのでなく〕常に開いた状態しておくことが必要になる。

3 〔本書のプラン〕

具体的な認識論的障害や問題の検討によって以上の一般的指摘がよりよく理解される。
【生まれながらの阻害要因】
具体的・イメージ的な最初の「観察」(2章)/ 拙速な一般化(3章)
【より特殊な障害】
用語の間違った解釈・概念分析(4章)/単一さや効用による説明の危険(5章)/実体という観念(6章)/実在論(7章)/生命という観念(アニミズム)(8章)/以上の観念は科学の価値を狂わせるので〔実例(9章)〕、取り除くために特殊な精神分析が必要(10章)
【経験的認識の障害以後】
誤った厳密さに基づく幾何学化(11章)/客観的世界の認識の一般的要素の集成(12章)