えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

2020-01-01から1年間の記事一覧

道徳主義者は道徳共同体を破壊する Archer (2017)

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/rati.12168 Alfred Archer (2017) The Problem with Moralism. Ratio, 31(3), pp. 342–350. 道徳主義(Moralism)には大きく2つの特徴が指摘されてきた。1点目は他人に対して不寛容・非共感的な道徳判断を…

道徳主義と道徳 Fullinwider (2005)

https://www.jstor.org/stable/24354874 Robert K. Fullinwider (2005) On Moralism. Journal of Applied Philosophy, 22 (2), pp. 105–120. ディケンズの『マーティン・チャズルウィット』に登場するペックスニフをモデルにすると、「道徳主義者」(Moralis…

人を殺すことは悪くない。まったく何もできない状態にするのが悪い Sinnott-Armstrong & Miller (2013)

jme.bmj.com Walter Sinnott-Armstrong & Franklin G. Miller (2013), “What Makes Killing Wrong,” Journal of Medical Ethics, 39, 3–7. 問題 AがBを銃で撃って殺した時、なぜAの行為は悪いのか? AはBに危害を加えた(harm)からだ。しかし、どういうタイ…

【メモ】ルネ・レオミュールが蜂の観察をもとに木材から紙を作る可能性に言及した1719年の文献について

ヨーロッパの製紙の歴史における重要な出来事の一つに、紙の原材料が麻や木綿から木材に変わったことが挙げられます。19世紀後半に実用化されたこの技術によって、おりからの紙の需要急増に伴う原材料の不足の問題は解決し、紙はより安価なものになっていき…

錯誤理論支持者は功利主義を支持すべきである Jaquet (2020)

https://link.springer.com/article/10.1007/s10892-020-09339-x François Jaquet (2020) Utilitarianism for the Error Theorist, Journal of Ethics, 近年、道徳的命題に関する錯誤理論が人気を集めている。近年の錯誤理論は次のように主張する。すべての…

ヒュームの人種差別 Immerwahr (1992)

https://www.jstor.org/stable/2709889?seq=1 John Immerwahr (1992). Hume's Revised Racism. Journal of the History of Ideas, 53 (3): 481-486. デイヴィッド・ヒュームは、一般には偏見や不寛容と戦った哲学者として知られているが、人種差別の擁護者で…

定言命法の人間性の定式(第二定式)とは Korsgaard (1986)

https://www.degruyter.com/view/journals/kant/77/1-4/article-p183.xml Christine M. Korsgaard (1986). Kant’s Formula of Humanity. Kant-Studien, 77(1-4): 183-202. I. 導入 カントは『道徳形而上学の基礎づけ』2章で、定言命法が存在するとしたらそれ…

知識の理論における系譜学的方法 Kusch & McKenna (2018)

https://link.springer.com/article/10.1007/s11229-018-1675-1 Martin Kusch & Robin McKenna (2018). The Genealogical Method in Epistemology. Synthese, 197(3): 1057–1076. 1 序論 この論文は、クライグ(Edward Craig)が『知識と自然状態』(1990) で…

オースティン『センスとセンシビリア』からの抜き書き Austin (1962)[1984]

知覚の言語―センスとセンシビリア (双書プロブレーマタ 4)作者:J.L.オースティン発売日: 1984/09/20メディア: 単行本 John Langshaw Austin (1962). Sense and Sensibilia, edited by G. J. Warnock. London: Oxford University Press. 丹治・守屋訳『知覚の…

英国の生理学的心理学、ベインからモーズレイまで Hearnshaw (1964)

A Short History of British Psychology 1840-1940 (Psychology Library Editions: History of Psychology)作者:Hearnshaw, L.S.発売日: 2019/12/10メディア: ハードカバー Leslie Spencer Hearnshaw (1964). A Short History of British Psychology, 1840-1…

予見する能と不能、ふたつの恩恵 アイスキュロス『縛られたプロメテウス』

アイスキュロス II ギリシア悲劇全集(2)作者:出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/01メディア: 単行本 アイスキュロス『縛られたプロメーテウス』 伊藤照夫訳 『ギリシア悲劇全集2 アイスキュロス II』、岩波書店、一九九〇年 プロメテウスが人間に対して…