- Bain. A. (1855). The Senses and the Intellect. London: John W. Parker and Son.
- 第一巻 運動、感覚、本能
- 第一章 自発的活動と運動感情(feeling)
- 筋肉感情について
- I. 有機体的筋肉感情について
- 10. 筋肉の痛みの諸形態
- 意欲との関連で見た鋭い痛みの特徴 ←ここ
ここまでの記述は、痛み(pain)の厳密に情動的(emotional)な性格を理解するためのものだった。では次に、痛みの意欲的(volitional)特性に進もう。これもやはり非常に際立ったものである。*1苦痛の意欲的特性ということで私が意味しているのは、ある状態から逃れるための特定の行為へ向かう刺激のことである(これについては「精神の定義」*2の部分でも説明した)。多くの感情(feeling)は、行為を促すという性質を多少なりとも持っている。ある感情はその感情を和らげるための行為へ駆り立て、別の感情はその感情を継続させたり増大させるための行為へ駆り立てる。前者を我々は痛みと呼び、後者を快楽と呼ぶ。上述したように、情動領域における我々の意識状態を二分するこの大きな区分のあいだには広汎な違いがあるが、なかでも特に際立っており明確な違いは、意欲(Volition)のもとであらわれる。言い換えれば、それぞれが生じさせる行為の本性という点にあらわれる。私たちは痛みを避け、反発し、逃げ出すが、他方で快楽についてはそれを増大させようとしがみついたり努力したりする。強い苦みは、それを軽減するための行動へと私たちを激しく駆り立てるものである。
したがって、例えば身体的苦痛の性格の一部としては、それを軽減したりそこからの解放につながると感じられるあらゆる行為を強力に刺激すること、あるいは、それを強めるあらゆる行為に対して強力に反発させることが挙げられる。動物が一定の状況から逃れようともがくことは、その動物が痛みの状態にあることを私たちに証明するのである。痛みの緩和を感じられるようなあらゆる運動が精力的に続けられ、痛みを深刻化するような運動は精力的に抵抗される。苦しんでいる者は、それを軽減する方法を知っている場合にはそれを行う。そうした手段がわからない場合には、単にもがき続けることで解放の可能性をもとめる。横になることで楽になるならそれが選ばれる。直立姿勢が解放を与えてくれるなら、非常に小さな幼児やまったく不器用な動物でさえ、その姿勢を取って維持しようとする。
意欲の観点から言えば、ある感情が別の感情より優先して私たちの活動を占有すればするほど、前者は後者よりも強い感情だということになる。ある人が混雑した部屋の空気の悪さに苦しんでいるが、冷たい夜風にあたっても苦痛を感じるといった状況であれば、その人が〔最終的に行う〕行為の元となる感情のほうが強いと判断する。この方法からわかるのは行為の動因だけであり、〔感情の〕表現の仕方や、純粋情動の特徴などはわからない。