えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

【メモ】ルネ・レオミュールが蜂の観察をもとに木材から紙を作る可能性に言及した1719年の文献について

 ヨーロッパの製紙の歴史における重要な出来事の一つに、紙の原材料が麻や木綿から木材に変わったことが挙げられます。19世紀後半に実用化されたこの技術によって、おりからの紙の需要急増に伴う原材料の不足の問題は解決し、紙はより安価なものになっていきました。

 ところで、「木材から紙を作る」というアイデアの起源は、フランスの科学者ルネ・レオミュール(René-Antoine Ferchault de Réaumur)の1719年の発見に求められることがあります。この年にレオミュールは、ハチの巣が木からできているという観察を元に、木材で紙を作る可能性を示唆したとされます。こうした記述は、日本製紙連合会や日本語版wikipediaの諸記事をはじめ、複数のインターネット上のサイトに見られます。同様の記述は、簡単に調べた限りでは、少なくとも1864年までは遡れるようです(Munsell, Joel (1864) A Chronology of Paper and Paper-making, p. 24)。しかしこれらの記述のほとんどには原典情報が記載されておらず、日本語および英語を用いてweb上で原典を調べるのに私自身やや苦戦しました。今後インターネットで同じ道をたどる人のために、ここに情報を残しておくものです。

 これらの記述の原典は、レオミュールが1719年11月15日に王立科学アカデミーで読み上げた『蜂の記述』(Histoire des Guêpes)です。この講演本文はアカデミー論文集に掲載され、現在ではフランス科学アカデミーのサイトGallicaで公開されています。また、次の文献にも収録されています。

Histoire des insectes

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