えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

強化快楽主義 Garson (2016)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1369848615001612?via%3Dihub

  • Justin Garson (2016). Two types of psychological Hedonism. Studies in History and Philosophy of Science Part C: Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences, 56, 7-14.

 欲求の内容に関する従来の快楽主義(I-快楽主義: InferenceのI)と区別し、「行為者の認知的生活のなかで欲求が強化されるメカニズム」〔=欲求維持のメカニズム〕に関する快楽主義を提案。これをR-快楽主義と呼ぶ(ReinforcementのR)。

【R-快楽主義】
 究極欲求Dが〔行為者〕Aの認知システム内で維持/強化されるのは、Dが快と結びついているという事実による。快と「結びついている」というのは二つの異なる意味をもつ。第一に、Dの充足が(規則的に、典型的に、ないし無視できない程度に)快を生じさせるか、それを構成する。第二に、単にDの充足を享受する(entertain)ことのみから、Aは快を得ることができる。(p. 7)

 R-快楽主義は、Anthony Dickinsonの「快楽インターフェース理論」(HIT)によって支持されている。Dickinsonによれば、人間の行動は生物としてのニーズに基づいた刺激反応的メカニズムと、志向的メカニズムの両方に支配されている。ときに相反するこの二者を調停するシステムが、快と苦である。快と苦は、欲求(wants)が生物としてのニーズに応えているか否かに基づき、その強化や消去をもたらすメカニズムの一部である。快苦の生物学的機能とは、「私たちが表象的な目標においている価値を調節して、志向的心理を刺激-反応心理に揃えてやること」だ。生物は快楽を欲求しているのではなく、食物や水などを欲求しているが、そうした欲求が快と連合しているならそれは強化され、苦と連合しているならそれは消去される。
 またR-快楽主義には、快楽主義的直観と反快楽主義的直観の両方をとらえているというポイントもある。