えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

余剰実験動物:ドイツの経験から Wewetzer et al. (2023)

https://www.embopress.org/doi/full/10.15252/embr.202256551

  • Wewetzer, H., Wagenknecht, T., Bert, B., & Schönfelder, G. (2023). The fate of surplus laboratory animals: Minimizing the production of surplus animals has the greatest potential to reduce the number of laboratory animals. EMBO Reports, 24(3), e56551. https://doi.org/10.15252/embr.202256551
問題の概要
  • 動物実験は多くの医学的革新をもたらしてきた。
    • しかし他方で、実験に使われず殺処分される「余剰」実験動物が大量に存在している。
  • 緻密に交配を計画しても、研究に「適さない」遺伝的背景をもつ動物は大量に生まれてしまう。性別や年齢によって研究に「適さなく」なる場合もある。
  • また、実験をタイミングよく行うために、業者は大量の実験動物をストックしておかなければならないという事情もある。
    • 査読者は追加実験を頻繁に要求するので、研究者は短い締切の中で迅速に対応せざるをえない。業者は大量のストックでこれに対応する。
    • (資金提供者やジャーナルが期間を延長すれば、繁殖者はオンデマンドで適当な数の動物を準備することができる。)
  • 一部の国・地域では、実験用に生産される動物数を公表するよう義務付けている。
    • EU(2017)では、殺処分される余剰動物のほうが実際に利用される動物よりもかなり多い(1,260万 vs. 940万)
    • ドイツ(2021)ではほぼ同数である(255万 vs. 250万)
ドイツの場合
  • ドイツの動物福祉法は、「合理的な理由」なしに動物を殺す行為に対し非常に厳しい刑事罰を課す。
    • 適切な動物実験は「合理的な理由」に相当するが、余剰動物を殺すことが「合理的な理由」に相当するとは限らない。
  • なお、鶏産業でもオスひよこ殺処分という同様の問題がある。
    • ドイツでは2019年以降これを禁止している。
  • この2019年の判決をきっかけに、ドイツのNGOが余剰動物殺処分のかどで動物実験施設を刑事告発した。
    • 判決はまだ出ていないが、有罪となればドイツの科学と医学研究に深刻な影響が及ぶ。
      • 余剰実験動物を自然死するまで飼育し続けることには大量の資源が必要になる。
  • ドイツでは、余剰動物をたとえば動物園の肉食動物に与えることが「合理的な理由」に相当するかどうかが検討されている
    • 遺伝子組換え動物の場合、EUの規制の緩和が必要になるかもしれない。
  • オスひよこ殺処分禁止後、ドイツでは合法国からメスひよこだけを輸入する業者も現れた。
    • これは問題を他国に転嫁したにすぎず、同じことは余剰実験動物でも生じるかもしれない。この問題はグローバルな問題である。
      • 実際、EUにおける非ヒト霊長類を用いた実験への規制強化により、研究施設の海外への移管が進んでいる。
どうするべきか
  • まずは、余剰動物の生産自体を削減することが重要
    • 繁殖戦略の最適化、遺伝子編集の利用、代替モデルの開発(ヒト臓器チップや無脊椎動物モデル)
    • EUでは、代替手法の開発が科学者に義務付けられている(2010/63/EU)。
  • これに加えて、追加の戦略が必要となる。
    • たとえば、メスの実験動物を「不適格」扱いするのをやめる:むしろ性を変数として扱うことで、研究の質も向上する。
  • 透明性を確保する必要がある
    • EUでは、2022年に次の過剰動物数調査が行われ、2024年に公表される予定。
  • 医療の進歩のために動物実験は必要だが、ジレンマがある。
    • 余剰動物を倫理的に取り扱うことで、動物福祉をさらに向上させることができる。