えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

珪藻の化石の研究 須藤 (2008)

0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる (くもんジュニアサイエンス)

0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる (くもんジュニアサイエンス)

  • 須藤斎 (2008) 『0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる』 (くもん出版)

  微化石研究についての本を読みました。この本は対象読者が多分小学生なので、化石とはなにか、地層とはなにかから始まり、著者の研究対象である珪藻について詳しい説明がなされます(植物のつくる酸素の25%を珪藻がつくっているというのは驚きです)。様々な珪藻の中でも、筆者は冬に休眠胞子をつくる「キートケロス属」の化石の分類を行っており、微小な化石を分類する困難や工夫がいろいろ紹介されています。興味深いのはスケッチの重要性を著者が強調することで、電子顕微鏡では珪藻の内側が見えず光学顕微鏡は狭い範囲しか見れないため、結局2つの顕微鏡から得た様々な情報がどんどん書き込まれていくスケッチのほうが写真より化石の特徴をよく反映するそうです。
  この分類作業を通じて著者は3400万年前に珪藻が急激に増えていることを発見します。そしてこの年代付近の地層をさらに研究するため、なんとこれまで不可能だと思われていた北極での掘削航海という大規模なプロジェクトに参加していきます。残念ながらこの航海は微化石研究に関して思うような成果は無かったようですが、北極海での厳しい研究の様子や、様々な国の研究者との暖かい交流の様子が活写されています。
  子供でも読める親切な内容ながら、大変興味深い研究生活の描かれた一冊でした。