えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

自分になる薬 vs. 自分以上になる薬 Riis, Simmons, and Goodwin (2008)

https://academic.oup.com/jcr/article-abstract/35/3/495/1856272/Preferences-for-Enhancement-Pharmaceuticals-The

  • Jason Riis, Joseph P. Simmons, and Geoffrey P. Goodwin (2008). Preferences for enhancement pharmaceuticals: The reluctance to enhance fundamental traits. Journal of Consumer Research, 35 (3): 495−508.

 人は、自分のアイデンティティにかかわると思っている特性(基礎的特性)ほど、それを薬によって増強することに抵抗感を示す(研究1-3)。そこで、基礎的特性を増強してもアイデンティティは揺らがないというメッセージを発すれば、基礎的特性を増強する薬に対する人々の関心を高められるのではないだろうか?

 本論文の研究4では、特性を増強する薬に「自分以上になる」("Become More Than Who You Are")もしくは「自分になる」("Become Who You Are")という宣伝コピーをつけ、このコピーの差が薬に対する関心の差を生み出すかを検討している。
 
 まず、基礎的特性であるSocial Confort(知らない人と会うのをどの程度楽しめるか)を増強する薬の解説文、もしくは、非基礎的特性である集中力を増強する薬の解説文を用意し、それぞれに「自分以上になる」というコピーをつけて被験者に読ませる。その後、この薬を飲んでみる興味がどのくらいあるかを尋ねると、Social Confort増強剤は集中力増強剤に比べあまり関心を持たれない。

 しかし、それぞれの薬の解説に「自分になる」という宣伝コピーをつけると、Social Confort増強剤への関心が高まり二種類の薬のあいだの関心差が消滅する。