Moral Psychology: Free Will and Moral Responsibility (A Bradford Book)
- 作者: Walter Sinnott-Armstrong
- 出版社/メーカー: A Bradford Book
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: ペーパーバック
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- Sinnott-Armstrong, W. ed. (2014) Moral Psychology
- Ch.1 Nahmias, E. Is Free Will an Illusion? Confronting Challenges from the Modern Mind Sciences.
- Ch.5 Mele, A. Free Will and Substance Dualism: The Real Scientific Threat to Free Will?
- Ch.5.1. Nadelhoffer, Th. Dualism, Libertarianism, and Scientific Skepticism about Free Will ←いまここ
- Ch.5.2. Vargas, M. Reconsidering Scientific Threats to Free Will
- Ch.5.3. Mele, A. Reply to Nadelhoffer and Vargas
- 進化生物学者Jerry Coyneは一般向け新聞の中でよくあるかたちの科学的な自由意志懐疑論を提示する。
- そこで普通の人の自由意志理解は「二元論的」かつ「非両立論的」とされている。この理解は科学者のものに近い。
- 一方メレは、社会心理学・実験哲学をもとにこうした見解に反対した。
- ここではメレたちの実験結果に反する新しい知見を紹介したい。
- 自由意志・責任・決定論・二元論に関する信念を測定するための「自由意志検査」をNahmias、Jason Shepard、Lisa Ross、Sripadaらと2年かけて作成
- 29の文について、7ポイントの尺度で賛成度を尋ねるもの
- 作成過程で1500人以上の一般の人々のデータを収集
- 自由意志・責任・決定論・二元論に関する信念を測定するための「自由意志検査」をNahmias、Jason Shepard、Lisa Ross、Sripadaらと2年かけて作成
- 「大学院生」に偏らないようにした
- ここでは簡略のため、
- 最も新しい調査(N = 330)から、
- 素朴二元論と素朴リバタリアンに関わる文だけをとりあげ、
- 賛成/反対はその程度に関わらずまとめて分析する
- ここでは簡略のため、
「われわれが物質的な体とはきりはなされた魂を持っているという事実こそ、人間の独自性をしめしている」
- 反対11%・賛成73% (M = 5.41; S.D. = 1.64)
「人間の行為を理解するのには脳だけでなく魂や心という観点が必要だ」
- 反対6%・賛成61% (M = 5.63; S.D. =1.29)
「人間の心が単に脳に還元されるということはありえない」
- 反対14%・賛成68% (M = 5.13; S.D. = 1.57)
「人間の心は単なる複雑な機械以上のものだ」
- 反対6%・賛成85% (M = 5.84; S.D. = 1.33)
自由意志とはある出来事を生じさせる能力であり、そのとき<それを生じさせる>ということは何かに引き起こされたものではない。
- 反対17%・賛成46% (M = 4.53; S.D. = 1.45)
- 大多数の人が(少なくとも表面的には)素朴二元論者・リバタリアン
- まず、メレのような擁護論には更なる探求が必要だとはいえる。
- ところが、次のような結果を見ると話は込み入っていることがわかる。
もし、人間に物理的でない(非物質的な)魂など無いと明らかになった場合、人間は自由意志を欠いているという事になる。
- 反対37%・賛成30% (M = 3.82; S.D. = 1.68)
もし、人間に物理的でない(非物質的な)魂など無いと明らかになった場合、人間は道徳的責任を欠いているという事になる。
- 反対38%・賛成35% (M = 3.82; S.D. = 1.68)
- だいたい1/3づつであり極めて混交的
- 先ほどの結果は素朴な自由意志は二元論的・リバタリアン的だと示唆するが、今回の結果は自由意志・責任・魂の「関係」については大きな不一致がある事を示唆する。
- さらに次は、科学の前でも人間が自由意志をもてるという信念を示す。
たとえ科学者によって人間の行動を支配する全ての法則が発見されたとしても、人々は自由意志を持てる。
- 反対7%・賛成73% (M = 5.39; S.D. = 1.98)
- こうした混交的結果からの教訓
- (1)科学的懐疑論者は、「自由意志と魂の「関係」」「自由意志と科学の「関係」」について即断し過ぎ
- (2)メレたちは普通の人が非両立論者だとまだ確立できていない
- 論争の決着はまだ先である
- ところで、なぜ今回の結果はこれまでの結果と違うのか?
- これまで……シナリオや自由記述を使用
- 今回…………抽象的な文を使用し同意の程度を聞く
- 前者は「直観」を、後者はしろうと「理論」をつり上げている?
- これが正しければ、実験デザインに更なる注意が求められる
- また、なぜ直観と理論が食い違うのかの説明が必要
- 抽象・具体での不一致との平行関係
- Nichols & Knobe (2007) : 抽象的なシナリオ提示で非両立論的回答。具体的だと両立論的回答
- この現象を彼らは情動による遂行エラーで説明
- Sinnott-Armstrong (2008) は二重過程説を提唱
- Nichols & Knobe (2007) : 抽象的なシナリオ提示で非両立論的回答。具体的だと両立論的回答
- 直観/理論・抽象/具体の不一致が何故おこるかは今後の研究課題だが、実際にこの種の不一致が起こっているという事はますます明らかになってきている。
- 「自由意志検査」の結果も多分、科学的懐疑論者とその批判者どちらの側から見ても不満足なものとなるだろう。
- 話を先に進めるにはさらなる経験的および概念的準備作業が必要だ。幸運な事に、メレのような研究者はその導きとなってくれている。