えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

素朴心理学、機械、機能主義 大沢 (1990)

  • 大沢秀介 (1990) 「素朴心理学は還元されうるか」, 『現代思想』 18, (7) : 134-142

 機能主義と消去主義的唯物論が折り合わないことを述べた論文です。3節に興味深い論点があったのでメモします。

 機能主義は素朴心理学に組み込まれている機械の概念に依存している。因果関係は反事実的条件法で表現可能なものでなければならないが、これは、条件を変化させることによって人間が操作可能なものでなければならないということでもあり、この意味で因果概念は操作に関連した素朴心理学的概念だと言える(see. Wright 1971)。そして、操作可能で閉じたシステムとしての因果的システムというのは「機械」概念の原型でもあり、この概念を人間の心に適用した時に機能主義が生まれるのだ。

 ところで、機械の運動の法則(機能)は自然法則ではありえず(壊れた機械も自然法則には従っている)、その使用目的に照らした解釈から切り離せない。自動車等はその目的が「固い素材」によって実現されてしまうので解釈の必要性を感じさせないが、機能主義者が心のモデルとするようなヴァーチャルマシーンは「柔らかい機械」であり、我々が明示的に解釈を与えてやる必要がある。そしてその解釈を支えるのは素朴心理学である。