- 作者: ベルクソン,河野与一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1998/09/16
- メディア: 文庫
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- ベルクソン アンリ [1934=1998] 『思考と動くもの』(河野与一訳 岩波書店)
可能性と事象性〔[1930]〕
「〔……〕しかし、過去のうちに可能なものを置く、というよりも可能的なものはどの瞬間にもひとりでに過去のうちに入り込むということは疑えません。〔現実〕が予見できない新しいものとして創造されていくにつれて、そのイメージはそこでいつでも可能なものであったということになります。しかしちょうどその瞬間になってはじめて常に可能だったであろうということになるのです。そこで私は、そのイメージの可能性はその〔現実性〕に先立つものではなく、一度〔現実性〕が現れてしまうとそれに先立ったであろうということになるといったのです。ですから、可能的なものは過去のうちにある現在の蜃気楼なのです。〔……〕とにかく、こうして可能的なものは〔現実的なものを前提しない〕と判断するものですから、〔実現〕がただの可能性に何か付け加えるということを認めるのです。可能性は出てくる時節を待っている亡霊のようにずっとそこにいたことになります。つまり、何かを付け加えてなんだかわからないが血か生命を体に充たして〔現実性〕になったというわけです、人は気がつかずにいますけれども実はまったく反対なので、可能的なものはそれに応ずる〔現実性〕のほかに、なおそこに付けくわわるなにかをふくんでいるというのは、可能的なものは一度現れた〔現実性〕とその〔現実性〕
とを後に追いやる装置との結合した結果〔効果〕だからです〔le possible est l'effet combiné de la réalité une fois apparue et d'un dispositif qui la rejette en arriére〕〔……〕」 pp. 153-154 下線・抹消線引用者