- 作者: サイモンエヴニン,Simon Evnine,宮島昭二
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 1996/02/01
- メディア: 単行本
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- エヴニン S [1991=1996] デイヴィドソン―行為と言語の哲学 (宮島昭二訳 勁草書房)
pp. 52-58
心理学的一般化は心理法則ではありえない
(T)「人間がドングリのオムレツを食べたいと思うならば、そうする機会があり、他のいかなる欲求もその欲求より強いということがない限り、一般には、ドングリのオムレツを食べるだろう」
もし信念や欲求を個別的に、相互に独立に規定することが可能なら、科学的本性を持つ心的法則を手に入れることが出来る。しかし一般化(T)前件の欲求の帰属には、より包括的な視点から行為者を合理的なものと見なすことが必要である。心的なものの全体論的・規範的性格により、「理由に基づいた説明の単純なパターンを、信念と欲求を一つの見通しの中に組み込む量的計算に洗練させることが出来るとは期待できない」。だから、心理的一般化には他の心的状態の影響を一挙に排除する条項(下線部)が含まれることになる。しかし、この条項があると、(T)を予測や説明に用いることはできなくなるので、(T)は心理法則ではありえない。
2種類の例外対処条項
フォーダーは、(T)が、
(F)「すべての事情が同じならば、蛇行している川では、外側の土手が浸食される」
と同じようなものだと考えた。しかし両者では例外対処条項の果たす役割が異なっている。
(F)の場合、現実には地質学的理想化が成立していないがゆえに例外対処条項が必要になる。フォーダーは、〔解釈とは独立に〕心的実在なるものが存在しており、全体論と規範性によって生じる複雑な状況は、理想化によって排除されると考えている。上述の「理由に基づいた……」は認識論的困難にすぎない。
しかし(T)は、現実に心理学的理想化が成立していないがゆえに例外対処条項が必要な訳ではない。規範性と全体論が欲求や信念にとって構成的であるという点から必要になるのである。解釈についての規範的かつ全体論的視座から切り離されたところで研究の対象となりうるような、法則に従う心的実在なるものは存在しない。