https://psycnet.apa.org/record/1942-03524-001
- D. C. McClelland (1942). Functional Autonomy of Motives as an Extinction Phenomenon. Psychological Review, 49(3), 272-283.
G. W. オルポートは、本来消えるはずの道具的行為が消えないという現象から、機能的自律という概念を提唱した。しかし、道具的行為が消えるはずだという前提は十分に吟味されていない。以下で見るように、道具的行為の消去は多様な仕方で遅延することがありうる。そこで、機能的自律に見える現象は、想定よりも消去が遅延しているだけの事例だと解釈できる。従って、以下で指摘するような要因が操作されてもなお消去が生じないという実験的証拠がない限り、機能的自律概念は不必要である。
ある道具的行為が消えると考えられる条件には次の3つがある。
- (1) 引き金(instigation)が失われた
- (2) よりよい道具的行為にとって代わられた
- (3) 報酬の除去
しかし各条件について、次のような要因により消去が(即座に)起こらない場合がある。
(1) 引き金が失われた
- (1-a) 引き金は内的事象なので、それが本当に失われているかどうかを確かめるのは難しい。本当は失われていないのかもしれない。
- (1-b) 仮に一つの引き金が失われていたとしても、その道具的行動には他にも引き金があり、そちらは失われていないかもしれない
- (1-c) 刺激を取り除いても、刺激の予期が引き金になっているかもしれない
- (1-d)条件付けが強力な場合、無条件刺激が取り除かれた後でもしばらくのあいだ、条件刺激は条件反応を喚起する。
(2) よりよい道具的行為にとって代わられた
経験的事実の問題として、この条件で道具的行為が消えるという事実は確立されていない。通常の実験パラダイムでは既存の道具的行為と新しい道具的行為は二者択一的だが、両者が非両立でない場合には、新しい道具的行為と並んで既存の道具的行為も生じるかもしれない。
(3) 報酬の除去
これは通常の消去にあたる。消去は通常の実験条件でも即座には生じないが、それがさらに遅延する要因がいくつもある。
- (3-a) 道具的行為をしたが報酬がなかったという事態の頻度が小さい場合。日常生活ではありがち。
- (3-b) 学習のさい道具的行為に報酬が毎回伴うとは限らなかった場合。日常生活ではありがち。
- (3-c) 報酬がなくなっていることに即座に気づけない場合。また、報酬に付随していた別の刺激が派生的に報酬になっている場合
- (3-d) 旧来の道具的行為に報酬がなくなっても、類似の道具的行為が強化されている場合(強化は一般化するため)