えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

皮膚と筋肉から生じるものとしての痛み Titchener (1898)

https://archive.org/details/primerofpsycholo01titc

  • Tichener, Eduard Brandford. (1898). A Primer of Psychology. New York, NY: Macmillan.

 以下に訳出したのはE. B. ティチナーが1898年に書いた心理学の入門書から「痛み」に関連する部分です。ここでティチナーは、痛みの源泉を皮膚および筋肉に求めています。皮膚については、言葉こそ出てきませんが痛み感覚固有の感覚器官としての痛点[pain spot]の存在を示唆しています。筋肉についてはとくに詳細な記述がありません。

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§19 皮膚からの感覚

 皮膚は眼や耳とは全く異なる器官である。なぜなら、皮膚は単なる感覚器官ではなく、意識に感覚を供給する[furnishing]以外にも身体に非常に多くのことをしてくれるからだ。たとえば、皮膚はその下にある器官を損傷から守り、髪や爪を担い、また皮脂腺や汗腺を内包している。さらに、皮膚のなかには、3種もの異なる感覚器官が含まれている。対象の重さを伝えるもの(圧力の感覚)、対象の温度を伝えるもの(熱および冷の感覚)、そして対象がもたらした損傷を伝えるもの(痛みの感覚)である。
 これら4つの感覚は、皮膚のあらゆる個所から得られるというわけではない。これらの感覚器官は、皮膚の表面に点在している。おそらくこれら4つの感覚は非常に古い感覚であろう。少なくとも圧力と痛みの感覚は、白や黒、またノイズの感覚よりもさらに古い。またこれらの感覚の身体的器官は単純なもので、神経繊維の小さな房であり、それ単体で存在していることもあれば、皮膚のなかで毛根やいくつかの細胞に巻き付いている場合もある。

§21 内的器官からの感覚

[…]
(1)骨、筋肉、腱:身体の骨は間接窩にはめこまれている。骨は筋肉によって動かされるが、両者は腱(sinew or tendons)によって結合している。筋肉からは、圧力の感覚と痛みの感覚、腱からは新しい感覚である張り[strain]の感覚、間接ないし窩からはよく知られた圧力の感覚が生じる。