えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

実験のあと経験についての報告をとると高次機能についてよくわかるのでは Jack and Roepstorff (2002)

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1364661302019411

  • Jack, A. I. and Roepstorff, A. (2002). Introspections and cognitive brain mapping: From stimulus-response to script-report. TRENDS in Cognitive Science, 6(8): 333−339.
  • 認知科学は内観という豊かなリソースを見過ごしているのではないか?
    • 実は認知科学は、実験パラダイムの考案や実験結果の解釈などで既に内観を利用している。だが内観データが体系的に集められることは稀。
内観の再評価
  • なぜ内観はテキトーに扱われてきたのか
    • 行動主義の影響? ※ワトソンやスキナーは言語報告の重要性を認識
    • より一般に、科学と人文学の知的分割の副産物
  • 近年は内観の方法論的洗練も進んでいるが、多くの認知科学者は偏見から内観を問題視し、客観的な行動データのみに依拠している。
    • 結果として、認知的実験の被験者は明らかに意識的なのに、意識研究はひとつの独立の研究領域を構成するというおかしな事になっている。

【BOX1: 主観的報告と客観的行動】
・客観的(行動的)反応と主観的(心的)反応の区別は、内観される反応か否かという区別と直行する。〔タスクと〕同時の言語報告は即時的な記憶の内容を言語化しているだけなので、ある反応に内観がかかわっているか直接調べるには懐古的な方法しかない。

認知マッピング
  • 近年、内観報告を重視すべき理由がでてきている。脳機能イメージングは脳機能の透明な描像を与えてくれないとわかってきた。
  • 実験者は通常、提示されるスクリプトや刺激を変化させることで、特定の認知機能を単離し、そしてそれを観察される脳活動の変化と関連させる。これがうまく行くには、二つの条件が必要となる。
    • (1)刺激が認知機能に(個人内・間で)一貫した影響を与える
    • (2)タスクによって誘起される認知機能が正しく特定されている
  • だが、提示される刺激との結びつきが密でない高次認知過程のばあい、両条件は容易には満たされない。
タスク分析と前頭葉の機能
  • この問題は前頭葉の機能にかんする研究で顕著に現れている。
    • Duncun & Owen によれば、前頭皮質の実質的に区別できない同じ領域での活動に結びついた認知機能が複数存在する(2000)。
      • Duncun & Owen は、これらの機能は実は同じものだと示唆する。だが前頭葉の解剖学的な複雑性を考えれば、よりよい構成概念を使えば各機能を局在化できると考えるほうが理にかなっている。
  • この改善に内観が使えると考えられる。「行動」の分析は実行機能の特定には荒すぎるし、前頭葉の活動は被験者の目標や戦略に依存することが知られている。そして、前頭葉に関連するいくつかの認知機能について、内観的証拠が情報を与えてくれる研究事例が既に一定数ある。リハーサルや想起、記憶の戦略を細かく明らかにしたり、注意の前景/後景を直接的に算定できる。より幅広く一貫したデータ収集をする価値はある。
刺激-反応からスクリプト-報告へ
  • 提案:実験の最後に詳細な回顧的報告をとろう
    • 【利点1】課題の性質に関して、研究者の理論的な視点とは(少なくとも部分的に)独立した更なる証拠が得られる。これは、刺激が同じで教示だけ違うタイプの実験で特に有効である。
    • 【利点2】課題遂行中に用いられている戦略を特定できる
    • 【利点3】被験者の経験に焦点を当てることができる
      • 事後的に尋ねるのは〔課題中の〕経験の細部を知るのにぴったりの方法とは言いがたいが、その鍵は得られるし、〔何もないのと比べれば〕課題の経験のされ方にかんする理解を拡大してくれる。
  • 事後的な質問は「客観的」データの収集に干渉しない。
    • Gallagher et al. (2002) は、相手が人/ロボットだと教示した上で被験者に同一のゲームを行わせ、人と教示した条件でのみ活動する脳部位を明らかにした。このとき、操作が与える心理的影響を半構造化面接で評価し、条件間で被験者の経験が異なることを明らかにした。
    • Lutz et al. (2002) は、同一課題を行う場合でも、訓練された被験者の経験報告の違いが、神経反応の違いを反映することを示した。
結論
  • 刺激-反応にのみ着目する狭い視野を広げる事で、高次機能に関するより良い理解が得られる。