えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

自分は善いことをしたと思っている人は(結果はどうあれ)幸福である Philips, Nyholm, and Liao (2015)

Oxford Studies in Experimental Philosophy

Oxford Studies in Experimental Philosophy

  • Lombrozo, T., Knobe, J. & Nichols, S. (eds.) (2015). Oxford Studies in Experimental Philosophy, Volume 1. Oxford: Oxford University Press.
    • 10. Philips, J., Nyholm, S. and Liao, S. The good in Happiness.

 この章では、ある人生が幸福か否かの判断にかんする実験哲学的研究がいくつか報告されています。とくに興味深かったのが研究6です。ここでは、「自分は道徳的に善いことをしてきたと思って自分の人生に満足して死んだ人」と「自分は道徳的に悪いことをしてきたと思って自分の人生に満足して死んだ人」(極悪人ですね……)の2条件について、その人が幸福であったかどうかの判断が被験者に求められます。具体的には、子供の病状を改善すると思って薬を与えていたナースと、子供の病状を悪化させると思って殺虫剤を与えていたナースが問題になります。

 この際、各条件につき半分の被験者にはさらなる情報が与えられます。ここでは、ナースの死後に明らかになったこととして、彼女の行為が実際には本人の考えとは裏腹の結果をもたらしていたとされます。具体的には、医学研究が進んだことで、実は薬が病状を悪化させていたことがわかった、ないし、実は殺虫剤は病状を改善していたことがわかった、とされます。

 結果として被験者は、実際の結果がどうなったかとは関係なく、善いことをしたと思って人生に満足していた人の方を、悪いことをしたと思って人生に満足していた人よりも「幸福だった」と判断しました。