http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0010027711000448
- Suter, R. and Hertwig, R. (2011). Time and moral judgment. Cognition, 119: 454-458
一方に功利主義判断を生む傾向にある認知的な制御過程、他方に義務論的判断を生む傾向にある情動的な直観的過程をおく道徳判断の二重過程説によると、パーソナルなジレンマに対して功利主義的判断を下すためには、ジレンマによって喚起される情動的衝動が制御される必要があります。この過程には時間がかかります。そこで著者らは、被験者にタイムプレッシャーを与えてやると、パーソナルなジレンマにおける義務論的判断が増える(し、パーソナルでないジレンマには影響を及ぼさない)だろうと考えました。
筆者らは、パーソナルなジレンマの中でも危害が手段である「高コンフリクト条件」・危害が副作用である「低コンフリクト条件」・そして「パーソナルでないジレンマ」の3条件を用意し、実験1では8秒/3分の解答時間、実験2では「なるべく早く直感的に答えるように」という教示/「好きなだけ考えて良い」という教示によって、被験者にタイムプレッシャーをかけます。すると予想通り、「高コンフリクト条件」でのみ、圧力下で義務論的判断の増加が見出されました。
(なお、3分間の撹乱課題の後の直観的判断(「無意識的思考」を反映するとされる;Dijksterhuis et al., 2006)でも情動が制御されているように思われ、認知的な制御過程は必ずしも意識的である必要はないようです)