Fodor: Language, Mind and Philosophy (Key Contemporary Thinkers)
- 作者: Mark J. Cain
- 出版社/メーカー: Polity
- 発売日: 2002/02/01
- メディア: ペーパーバック
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- Cain [2002] Fodor: Language, Mind and Philosophy (Polity)
Chap. 1 The Fodorinan Project
フォーダーの課題
・素朴心理学
・物理主義
→物理主義の枠内で素朴心理学に正当性を与えるという課題
素朴心理学
素朴心理学は、記述的・説明的・予測的な営み
素朴心理学の中でも、志向状態が重要な役割を示す
志向状態の特徴(Fodor 1987 chap. 1.)
・意味論的性質を持つ
・因果的に活性である
・意味論的性質と因果的力の間に体系的な関係がある
・生産性を持つ
・一般性を持つ
・内包性を持つ
・質的性格(〔現象的性質〕)は持たない
理論としての素朴心理学
我々はどうやって素朴心理学を営んでいるのか?
→フォーダーのアイデア:素朴心理学とは、科学理論と似た理論である。
フォーダーは、心的現象・環境からの衝撃・観察可能な行動に関する因果的な一般化のネットワークの存在を主張する文の大きな集まりからなるという点で、素朴心理学を理論だと考える。こうした文の中に現れる心的な名辞(例えば、「信念」、「欲求」など)は、観察可能な行動を説明するために理論によって仮定された観察不可能な現象を指示する理論的名辞である。 p. 7
我々は、志向状態と行動に関する一連の豊かな因果的一般化を暗黙知のかたちで持っており、その大部分は生得的(チョムスキーに倣って)だとフォーダーは考える。
物理主義
物理学的性質と特殊科学的性質の間に成立するだろう関係は、同一性とSVの2種類がある。どちらでも、物理法則は個別科学法則を支えることができるようにみえる。
・物理主義:実在は(科学的領域に限らず)一般的に言って底のところでは本質的に物理学的である、だから、本当に例化されているすべての性質は、究極的には物理的性質にSVし、物理的な事実の総計が事実の総計を決定するようになっているという見解
(物理主義者は、全てのリアルな性質を科学的に価値のあるものとして扱う必要はない。究極的には物理的性質にSVするが、全く法則に乗っからない性質もある。)
物理主義と心的なもの
物理主義のジレンマ
物理主義によれば、我々が本当に心的な状態を持っているのだとしたら、それは複雑な物理的システムの状態なのであるということになっていなくてはならない。
しかし志向状態は、
・内容を持っている
・存在しない対象を表象する
・内容と整合的な因果的力を持つ
等の特徴を持つため、物理主義とどう整合的であるかを見るのは難しい。
【物理主義者のジレンマ】
・心的なものの存在を否定する
⇔
・どのように物理的システムが志向システムでありうるかを示す物理主義的理論を構築する
→フォーダーは後者の道を行く。素朴心理学を科学理論と似ているものと捉え、素朴心理学と(少なくとも)緊密に関係したまともな科学的心理学がどうすれば存在しうるかを示すというプロジェクト
物理主義と因果
心的なものの実在論をとりつつ物理主義はとらないという道は無いのか? → 物理主義者は因果性をめぐる考察に訴える
物理主義をとらないと心身因果が神秘になる + 多重決定の問題が生ずる。
→心的状態が行為の原因であるならば、物理的領域の中にあった方がよい
反対意見としては
・物理的世界の因果的閉方性を否定する
▲物理法則の存在が否定されるか、物理法則を掬うために心理物理法則を導入せざるを得なくなる(どちらも魅力的な選択肢ではない)。
メモ
典型的に、結果として生じる思考の連鎖の輪の内容は、論理的に妥当な論証argumentの命題の間の関係を反映する様な形で、互いに関係し合っている。フォーダーも言うように、「常識的な信念/欲求心理学が把握するものとしての認知的な精神に関する事実の中でも、最も際立ったものの一つは、[……]思考の特徴と論証との間にふつう類似性があるということだ」(1987: 13)。 p.5