- 作者: 木曾明子,竹部琳昌,大芝芳弘,片山英男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/11
- メディア: 単行本
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- ソポクレス 『アイアース』 木曾明子訳 『ギリシア悲劇全集4 ソポクレース II』、岩波書店、一九九〇年
アイアスと動物の関係が印象的です。冒頭部分、ソフォクレスはオデュッセウスを猟犬に見立てた上で、その獲物としてアイアスを登場させます。アイアスはアテナに欺かれ、ギリシアの武将たちと勘違いしてギリシャ方の家畜たちを殺してまわっています。この醜態に気づいたアイアスは強く恥を感じ、自ら殺した動物たちの死骸のただなかで泣きくずれて自死を念います。けっきょく彼は、先ほど動物たちを斬ってまわった同じ剣で今度は自分の体を貫いて死ぬことになります。そうして、動物たちの死骸がはけた舞台の上に、今度はアイアスの死骸が横たわります。その死骸をうちすてておくべきか埋葬すべきかの議論が、劇の後半を構成します。最終局面でようやく埋葬が決まり、アイアスはなんとか動物ではないという面目を保ったかのようです。
それでは、本年もよろしくお願いします。