- 作者: ジョン・ロールズ,川本 隆史,福間 聡,神島 裕子
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2010/11/18
- メディア: 単行本
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- Rawls, John. (1999). A Theory of Justice. Revised Edition. Cambridge, MA: Belknap Press of Harvard University Press.(2010, 川本隆史・福間聡・神島裕子訳, 『正義論』, 紀伊國屋書店)
- 30. 古典的功利主義、不偏性、そして慈愛
- 原初状態での選択からは、正義の二原理が導出される。では、古典的功利主義の原理は、どこから導出されるのだろうか?
- 合理的で不偏・公平な「理想的観察者」の想定から?
- 理想的観察者の想定それ自体は、公正としての正義と矛盾しない。
- 理想的観察者は、ある社会システムが契約によって選択される正義の原理を満たしている場合に、その社会を承認する、と考えることが可能だからだ。
- 理想的観察者の是認による正義の定義は、具体的な正義の諸原理を導きだすようなものではない。
- 理想的観察者は、ある社会システムが契約によって選択される正義の原理を満たしている場合に、その社会を承認する、と考えることが可能だからだ。
- 理想的観察者の想定それ自体は、公正としての正義と矛盾しない。
- 理想的観察者が「完全に共感的な存在」であると仮定すると、古典的功利主義の原理を導出することができる
- 完全に共感的:社会の構成員全てに等しく共感し、その人々の欲求充足の程度に応じて自らの欲求が充足される
- このような存在は、欲求充足の総計が一番大きな社会を一番強く承認するだろう。
- 完全に共感的:社会の構成員全てに等しく共感し、その人々の欲求充足の程度に応じて自らの欲求が充足される
- このように考えると、古典的功利主義における個々人の無視、没人格性をよく理解できる。
- 個々人のもつ様々な欲求が、理想的観察者という一つの欲求システムの中に併合されている。
- 原初状態のと比較
- 理想的観察者……共感的
- 原初状態における当事者……相互に関心を持っていない
- もし原初状態における契約の当事者が「完全な利他主義者」であれば、古典的功利主義が選択されるだろう。
- 完全な利他主義者:社会全体における欲求実現が増大するほど自らの欲求も実現される人
- ここから、古典的功利主義は人間の動機づけについて利他主義を仮定していることがわかる
- ところで、契約の当事者全員が完全な利他主義者であるという想定は実際のところ不可能である
- ここで人々には衝突する利害関心が全くないため、正義の問題が生じないからだ。
- 完全な利他主義者:社会全体における欲求実現が増大するほど自らの欲求も実現される人
- 理想的観察者という理念は、道徳判断の不偏性・公正性の唯一の解釈ではない。
- 不偏・公正な判断とは、原初状態で選択されると考えられる原理と合致した判断だと考えることもできる。
- 観察者の立場ではなく、当事者の立場から不偏性・公正性を定義するやりかた
- 功利主義は、不偏性・公正性を没人格性・非人称性と取り違えている
- 観察者の立場ではなく、当事者の立場から不偏性・公正性を定義するやりかた
- 不偏・公正な判断とは、原初状態で選択されると考えられる原理と合致した判断だと考えることもできる。
- ところで、共感的ではあるが個人の独立性を尊重するような理想的観察者は可能か?
- この理想的観察者は共感的なので、合理的な自己愛が自分の欲求充足を求めるのと同じように、全ての他人の欲求充足を求める。つまり、すべての人を愛している慈愛に満ちた存在である。
- しかし、愛すべき人が複数おり、それらの人々のあいだで欲求が対立しているなら、この人はどうすれば良いのだろうか?
- 個人の独立性を守りながら慈愛がその目標をできるかぎり達成しようとするならば、〔個々人の優先順位を何らかの形でつけなければならない〕。かくして、正義の二原理が必要になる。
- しかし、愛すべき人が複数おり、それらの人々のあいだで欲求が対立しているなら、この人はどうすれば良いのだろうか?
- この理想的観察者は共感的なので、合理的な自己愛が自分の欲求充足を求めるのと同じように、全ての他人の欲求充足を求める。つまり、すべての人を愛している慈愛に満ちた存在である。