えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

能力の心理学やめましょう、状態の心理学しましょう Herbart (1834)

https://books.google.de/books/about/Lehrbuch_zur_Psychologie.html?hl=de&id=-bM9AAAAYAAJ

  • Herbart, J. F., Lehrbuch zur Psychologie, 2. Aufl. (Königsberg, August Wilhelm Unzer, 1834)
    • Einleitung

 人間の内的経験を集め、その全体を理解可能にするのが心理学である。同じことを外的経験についてやるのが自然哲学だ。どちらの学問も、その根本的なアイデアの点で一般形而上学に依存している。だが、形而上学の中で問われてきた多くの問いは心理学によって回答可能であるため、心理学を形而上学よりも先にやってもよい(つまり、魂(実体としての精神)という形而上学的な概念をさしあたり使わないでもよい)。

 これまでの心理学は、「能力」[Vermögen]の分類と説明をおこなってきた。だが私たちが直接経験するのは能力ではなく、刻々変化する「状態」[Zustand]である。そこで、状態の方にもっと重きをおく心理学が必要だ。

 心理学を三つの主要な自然科学と比較してみよう。まず自然史は、抽象化をおこなうさいの基盤となる個別事例をしっかり集めてくれる。だが心理学ではそのような事実の収集が十分なされていない。これはいけない。次に経験的自然学(物理学)は、実験と数学を用いて現象が生起する法則を明らかにしている。心理学では実験は使えないので、その分いっそう数学を注意深く使って、法則の発見を目指さなければならない。最後に生理学が用いている栄養摂取・興奮性・感受性という三つの基本的なアイデアは、表象能力・欲求能力・感情能力と類比できるかもしれない。ただし、生理学の対象に比べ心理学の対象は遥かに変化しやすいので、類比を押し進めすぎるのはやめよう。

 これまで思弁的な心の研究には矛盾や問題が山積している。「これらの問題に対する手近な解決法は一般形而上学の中にある。だが心理学の観点からさらなる仕事をすすめるためには、より高度な数学が必要になる。というのは、表象は力[Kraft]として扱われるべきであり、ある表象の活動[Wirksamkeit]を規定するのはその表象の強さ、対立物、結合物なのだが、これらはすべて程度(Grad)によって異なるものだからだ」(p. 6)。

 本書は簡単なものだから、能力にかんする古い仮説を完全に廃絶することはできない。そうした仮説を手引きとしつつ、経験的心理学の概要を与えるものである。なお心理学史についてはカルス(Friedrich August Carus)の三巻本(Geschichte der Psychologie)を見よ。