http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mila.12009/full
- Langdon, R. (2013) Folies à deux and its Lesson Two-Factor Theorists. Mind & Language, 28, 72-82
- 妄想の2要因説:個々の妄想に関して次の二点が問われなければならない。
- (第一要因)その内容の妄想が生じたのはなぜか
- (第二要因)その妄想がありそうにないとして棄却されないのはなぜか?
- 妄想の内容については、二人組精神病の場合でも他の種類の妄想とあまり変わらない。
- 最も多いのは被害妄想(Patel & Tan 2006)、分身妄想や寄生虫妄想も見られる(Hart & McClure 1989; Duhamel & Verdoux 1992)
- しかし経発者(移される方)の役割が特殊であるため、二要因説(を含む妄想の一般的理論)に対する挑戦となる。
第一の教訓:第一要因として外因的なソースにも注目しなくてはならない。
- これまで二要因説は、妄想の内容に関わる第一要因として、内因的な過程を重視してきた。
- 神経病理学的なもの(顔領域を処理する脳部位の損傷など)
- 動機的なもの(自己奉仕バイアス など)。
- しかしながら、経発者の妄想内容の起源は純粋に外因的である
- (同時的に同じ妄想に至るfolie simultanéeは除く)
- 従って二要因説は、「第一要因」として外的な要因にも注目すべきである。
- 他人が情報のソースとしてどのくらい信頼できるかの評価に関わるプロセスの検討が求められる。
- この点で注目すべきこととして
- (i)二人組精神病は親密な関係のなかで生じやすい
- 夫妻・兄弟・親子が報告例の90%(Newman & Harbit 2010)
- (ii)経発者の方が発端者より目下で依存的である場合が多い(つまり、その人の言うことを信じるのが普通である場合が多い
- (i)二人組精神病は親密な関係のなかで生じやすい
第二の教訓:経発者にも第二要因はある
- 妄想的信念の「維持」に関わる「第二要因」についてはどうか?
問1:妄想が「感染する」とか「移る」とか言われるが、精確に言って、発端者は経発者に何を伝えているのか?
- 妄想内容を伝えていることは間違いない。係争点は、妄想的な思考の仕方それ自体が経発者に「移っている」のか否かにある。
- Amone, Patel and Tan (2006) によると、42-99年の症例報告のうち89%における経発者が、統合失調症や認知症、精神遅滞を含むなんらかの内在的で持続的な脆弱性を持っていた。
- Amoneらの結論:発端者の妄想が「移る」と言われているのは、「既に感受性のあった人において、精神疾患を生み出す条件が一時的にトリガーされている」に過ぎない。
- つまり、経発者は既に内因的な第二要因を持っていたと考えられる。
問2:病的な脆弱性も無ければ発端者と離れると妄想が消えるような経発者は「妄想的」なのか?
- 残りの11%では、外的要因により経発者の普段は正常な信念評価機能が一時的に損なわれている?
- この考えは、発端者と経発者を引き離すと経発者の妄想は時期になくなるということからも支持される
- また二人組精神病はその人たちが社会から孤立している時に生じやすい(報告例の2/3にあたる(Newman & Harbit 2010))。
- ところが、敬意を払う人が言ったことを信じるのがデフォルトになっている、というのは全く異常なことではない。
- 従って、経発者は全く妄想的ではないということになる。
- しかし経発者にはその妄想的信念とそのソースに疑いを向けるべき場合がある(例えば、その妄想により発端者が罪を犯しそうな場合)。
- そして発端者から離れれば妄想から逃れられる能力はあった。
- しかし、敬意を払う人と矛盾したことを信じたくないという動機ゆえ批判的吟味を行えなかった(motivated inability)
- この点で、経発者の信念は一時的に妄想的だったと言える。
- この場合の「第二要因」は「抑止の失敗(inhibitory failure)」の一種であり、経発者はある信念の真偽を検討するためにその信念が偽であるかのようにしておくことに失敗している。
- なおこの提案は、信念獲得プロセスは正常であり、不合理性は維持される仕方にあるとしたRadden (2010) の路線と合致している。