https://www.jstor.org/stable/j.ctt5hgz15
- Brian Rappert and Michael J. Selgelid (eds.) (2013), On the Dual Uses of Science and Ethics: Principles, Practices, and Prospects, Canberra: ANU E Press.
- 1. Michael J. Selgelid, Ethics and Dual-Use Research (pp. 3–10) ←いまここ
- 14. Steve Clarke, The Precautionary Principle and the Dual-Use Dilemma (pp. 223–234)
原爆の例が示すように、科学的発見は人類を益することにも害することにも使用しうる。うした、善悪両方の目的で使用される可能性を持つ研究は、今日では「デュアルユース研究」と呼ばれる。ただし、ここにはほぼすべての知識と技術があてはまるため、実際に「デュアルユース性が懸念される研究」(DURC)と呼ばれるのは、とりわけ破滅的な目的で使用しうる研究であることが多い。
デュアルユース研究に対しては、個人から研究機関、国家、国際機関に至るまで、様々なレベルでの倫理的意思決定が求められる。しかしどのレベルにおいても、意思決定は簡単ではない。科学の有益な使用を促進しつつ同時に有害な使用を回避するのは難しいというのが、まさにデュアルユール現象の本質だからだ。この困難は、「デュアルユースジレンマ」と呼ばれる。
ともあれ、様々なレベルにおけるアクターの意思決定は、責任、危害と利益、価値などにかかわっており、これはつまり、すぐれて倫理上のものだということだ。しかし、デュアルユース研究をめぐる議論の多くに、倫理学者がかかわることは少なかった。また、生命倫理学の議論でも、デュアルユース研究が取りあつかわれることは少なかった。この論文集はそれを補うものである。