- 作者: 唐沢かおり
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2017/07/27
- メディア: 単行本
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- 唐沢かおり (2017). 『なぜ心を読みすぎるのか』(東京大学出版会)
- 第1章 対人認知を考える視点 ←いまここ
- 第2章 性格特性から見る評価の役割 ←いまここ
- 第3章 行動の原因としての心
- 第4章 心の推論方略
- 第5章 人間としてみる
- 第6章 道徳性の根拠としての心
- 第7章 互いにみきわめあう私たち
第1章 対人認知を考える視点
- 「対人認知」 = 他者の心を「理解」し「評価」すること
- 心は行動を生み出す原因であり、心を理解することで行動の予測が可能となる
- 行動の「理解・予測・制御」を目指す「しろうと心理学者」としての人間
- 心の理解や予測に基づいて、「評価」が行なわれる。
- =他人の心を「よい - 悪い」「正しい - 間違っている」などの軸の上に位置付ける。
- 評価に基づいて、その人に接近するか回避するかが決定される。
- 心は行動を生み出す原因であり、心を理解することで行動の予測が可能となる
→ 対人認知は、対人相互作用のなかで適応的にふるまうためのもの
第2章 性格特性から見る評価の役割
- 他人に関する情報は多様なので、まとめあげが重要になる。
- そうしたまとめあげの際に日常的に使われているのが「性格特性」
- 本章では性格特性に関する研究から次の点を確認する。
- 情報のまとめあげに「評価」が重要な役割を担っている
- 評価の具体的内容には「人柄の良さ」と「有能さ」の二次元がある
【アッシュの印象形成研究(Ash, 1946)】
- ある人物を形容する語が複数与えられ、それをもとにその人物の全体的印象を評定する
→ 印象の評定に特に影響の大きい語(=「中心特性」)がある
- 例えば「知的な、器用な、勤勉な、暖かい、注意深い」の「暖かい」を「冷たい」に変えると、当該人物の望ましさに関する印象が反転する
- 中心特性が情報をまとめる枠組みとなっている
【ローゼンバーグらの対人認知次元研究(Rosenberg et al., 1968)】
- 「ひとりの人物に共存する特性」について尋ねることで、様々な性格特性語の_連合関係を検討
→ 特性語が分布する空間は、「社会的望ましさ」と「知的望ましさ」を軸とすることがわかった
【スラルとワイヤーの対人記憶モデル(Srull & Wyer, 1989)】
- 被験者に他人の様々な行動について想起させ、その想起のパターンから人に関する記憶がどう体制化されているかを検討する
→ 各行動は特性によってまとめあげられている(記述的体制化)
→ 各特性はさらに望ましさにかんする評価によってまとめあげられ(評価的体制化)、その人物の全体的印象が決まる
- 既存の全体的印象に一見反する行動データは、既存の全体的印象にあわせて解釈されやすい(評価的体制化の優位)
= 人物の評価は変わりにくい
- ローゼンバーグが示したような対人評価の二次元は多くの研究によって提唱されている普遍的なものだ。
- 「人柄の良さ」 -「有能さ」
- 「他人のことを評価した」エピソードを集め第三者によって評定させると、道徳性と有能さの評価が全体の3/4を占める(Wojciszke, 1994)
- 社会集団に対するステレオタイプ的認知も、人柄の良さと有能さの二次元をもつ(Fiske et al., 2002)
- この二次元の存在には文化差がない(Cuddy et al., 2009)
- 「人柄の良さ」 -「有能さ」
- 「対人認知は、対人相互作用のなかで適応的にふるまうためのもの」という視点から見ると……
- 「人柄の良さ」による評価は、自分の社会生活の快適さや安心・安全を確保するために重要
- 「有能さ」による評価は、他者がどのくらい頼り/脅威になるかをみきわめるために重要
- まず問題となるのは他人の「人柄の良さ」であり、次にその程度(「有能さ」)が問題になる