- David Enoch (2009). Wouldn't it be nice if p, therefore, p (for a moral p). Utilitas, 21(2), 222-224.
「~は良いことだ」(it is good)というオペレータ(G)の特徴として、
・「pは良いことだというのは良いことだ」(GGp)
から
・「pは良いことだ」(Gp)
を導出できる点がある(「GGp → Gp則」)
このことは、倫理学のいくつかの議論に光を投げかける。
たとえば倫理学者のなかには、「人間に尊厳があるのはよいことだ」から「人間には尊厳がある」を推論するものがいる。これは一見あきらかに不合理な願望的思考の典型のように見える(※ただし、道徳的事実は私たちが作っているとする立場のもとではそう不合理ではない)。だが、もし「人間には尊厳がある」を「qであることは良いことだ」という形式で定式化できるならば、「人間に尊厳があることは良いことだ」(Gqq)から「人間には尊厳がある」(Gq)を導出することができる。