えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

動物は現在に縛られているか? 宮田・藤田 (2011)

http://ci.nii.ac.jp/naid/130000780099

  • 宮田裕光・藤田和生 (2011) . ヒト以外の動物におけるプランニング能力:霊長類と鳥類を中心に, 動物心理学研究, 61(1), 69-82.

  哲学では、動物は現在に縛られているが人間には未来と過去がある的な話をよく見かけます。そこで動物の計画能力にかんする総説論文を読んでみました。

  ◇   ◇   ◇

  動物心理学においても「プランニングとエピソード記憶は共に「メンタルタイムトラベル」のメカニズムに基づいているが、こうした能力は人間に固有だ」という主張が力を持ってきました(「Bischof-Köhler仮説」(Suddendorf and Corballis, 1997))。しかし近年では、統制された実験によって動物のプランニング能力が示唆されているようです。プランニング能力の発揮と単なるオペラント学習を区別するためには、次のどちらかの行動が求められることになります。

  • (1)現在の欲求を満たすような行動だが、それが新奇で複数の反応系列からなる
  • (2)将来の欲求状態に基づく行動

  本論文はこの二種類に該当する霊長類と鳥類の研究をレビューしています。
  例えば、(1)アイちゃんは小さい方から順に画面上の数字に触れることができますが、一つ目の数字を指した瞬間に他の数字の位置を入れ替えると、誤った指差しを起こしやすくなります。これは、アイちゃんが一回ごとに次の数字を確認しているのではなくて、予めどこを指すかを計画していることを示唆します(Biro & Katsuzawa, 1999)。また、ニホンザルが迷路を解く際のカーソルの動きに対応するニューロンは、課題開始以前にも発火しているという研究も興味深いです(Mushiake, et al. 2006)。
  (2)で印象的だったのは、チンパンジーやオランウータンは果物という別の選択肢があってもあえてホースを選び、そこから70分後出てくるスープ(果実よりも好まれる)を飲むことが出来るという研究です(Osvath & Osvath, 2008)。これは、チンパンジーやオランウータンが現在の欲求に打ち勝って将来の欲求のために計画的な行動を行える可能性を示唆しています。