The Inquiring Mind: On Intellectual Virtues and Virtue Epistemology
- 作者: Jason Baehr
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand
- 発売日: 2011/09/05
- メディア: ハードカバー
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- Baehr, J. (2011) The Inquiring Mind (Oxford University Press)
Ch.2 The Intellectual Virtues
Ch.4 Virtue and Character in Reliabilism
Ch.8 Open-mindedness
Ch.9 Intellectual Courage
- 【やること】知的徳とその認知経済における役割にかんする準備的考察
- 1.知的徳を6つの「自然なグループ」に整理
- 2.知的徳を関連する認知的卓越性(認知能力faculities、才能、気性、技能)から区別
2.1 知的徳の自然なグループ分け
- 「問いにかんする真理の能動的・意図的な探索」としての「探求」が成功するためには、いくつかの要件がある。
- この要件の種類という観点から、対応する知的徳グループ分けする
- 厳密なものではないが、知的徳が関連する認知的成功の種類や、知的徳の相互関係が見えやすくなる。
- この要件の種類という観点から、対応する知的徳グループ分けする
- もちろん手に入れるのに探求は特に必要ない知識も相当ある
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- 周囲の現れに関する知識/記憶や内観的知識の大部分/アプリオリな知識にもある(2+3=5とか) etc…
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- しかし手に入れるのがもっと難しく探求を必要とする知識もある
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- 微視的実在に関する知識/形而上学的問題に関する知識/時空的に離れた事態に関する知識 etc…
- 認知的「行為者」として、思考、推論、判断、解釈、評価……することが必要
- 有徳なひとはこれらを適切/合理的なやり方でおこなう
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【探求が成功するための要件1】そもそもの動機
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- ×怠惰lazy・無反省unreflective
- ○探究心inquisitiveness、反省性reflectiveness、思慮深さcontemplativeness、好奇心旺盛curiosity、冒険心wonder
【要件2】探求の焦点を適切にしぼり持続させる
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- 注意深さ、細部へのこだわり、慎重な観察、綿密さscrutiny
【要件3】複数のソースの評価、および通時的評価の一貫性
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- 不偏性、心の広さopen-mindedness/公平さfairness、一貫性、客観性
【要件4】自己欺瞞を回避し(都合のいいように考えず)、知的な統合性を保つ
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- 自己認識self-awareness、自己吟味self-scrutiny、誠実さ、率直さtransparency
- 認知的状況を誠実に評価したら、それに基づいて信念の排除・判断保留・更なる探求に動機付けられる必要がある。ここに知的統合性の徳が具体化する(知的統合性は他の知的徳にかなり寄生的である see. Ch. 8)
【要件5】これまでの考え方では対処できない複雑な問題への対処
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- 想像力の豊かさ、創造性、適応力、柔軟性、機敏さagility、心の広さ
【要件6】通常でない尽力
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- 真理の探求が、危険、とても時間を喰う、単純作業の反復を求める……等の場合
- 知的勇気、決心determination、忍耐強さpatience、勤勉さdiligence、粘り強さtenacity
2.2 徳、能力、才能、気性、技能
- 分類に続き、他の認知的卓越性との関係を説明する
2.2.1 能力
- 認知能力(感覚、内観、記憶、理性……) との違い
- (1)能力は生得的だが、徳は選択や行為により涵養される性格特性
- (2)能力は人となりと無関係impersonalだが、徳は「人としての価値personal worth」に影響する
- 人に知的徳を帰属させることは、その人を―—特定の知的な側面に関してであるが―—人間としてポジティヴに評価するということ。一方で、高機能な認知能力を〔知的に〕腐りきった人が持つこともある。
- (3)認知能力の遂行は普通行為者性の行使を必要としない
- 知的徳が自動的に作動する可能性は否定しないが、そこでも行為者性は認知能力の機械的動作には(必要)ない形で関与する。
- 少なくとも特性を養うのに行為者性が必要
- また例えば、自動的にであれ注意深い仕方で推論しているのは行為者自身である。注意深い推論は行為者に生じていることではない。
- 認知能力との結びつき
- 知的徳は認知能力の働きにおいて顕在化することがふつう
- 知的徳の<働き>は、認知能力の運用によって部分的に構成される
- 認知能力の最適な遂行が、知的に有徳な行為者性を必要とすることがある。
- 知的徳は認知能力の働きにおいて顕在化することがふつう
2.2.2 才能
- 才能……我々が「知能」と言うような一定の生得的な知的能力
- 違いも結びつきも基本的認知能力と同じようなもの
- ただし才能は能力ではない。才能は能力の局所的な卓越性と考えられる。
- 違いも結びつきも基本的認知能力と同じようなもの
2.2.3 気性
- 気性……「自然な = フツーの = 天然の naturally」心理的傾向性 との違い
- 「あいつフツーに心広いんすよね naturally open-minded」
- 自然(フツー・天然)≠ 生得的:育ちや共同体の影響で「ふつーに心広く」なれる
- (1)しかし知的徳は、単なる育ちの産物ではない。
- 育ちは知的徳を所有する程度に影響するが、あくまで徳は本人の選択と行為の繰り返しの産物であるところが大きい
- 一方、「フツーに心広い」とか言う時には、それは本人がそうしている訳ではないのだと言っている。
- (2)気性は本人の人としての価値に実質的な仕方で影響するようにはみえない
- 確かに、気性に徳の語彙を使えることからも、認知能力や才能よりは影響力がある。しかしこの点で気性と徳が並ぶ訳ではない。
- 「タツヤは心が広いね」に対する「あれがフツーなんすよ」という応答は、タツヤが真に良い人であるという前者の主張を揺るがしていると考えられる
- (3)有徳者はその徳を何らかの形で把握する
- 知的な有徳者は、知識・真理・理解などの価値と、自分の有徳な活動がそれをどう促進しているかを感じ取っている。
- 気性にこういうことは必要ない
- 「あいつフツーに心広いんすよね naturally open-minded」
- 以上の区別はアリストテレスの「真正な(性格)徳」と「自然的な徳」の区別と類似している(NE, 1144b)。
2.2.4 技能
- 技能(一定の特殊/専門的な知的課題を遂行する能力) との違い
- 教師の技能、実験の技能……
- 反復によって涵養されるのは徳と共通だが……
- (1)技能は人としての価値に強くは影響しない
- 有能な教師であるというのは、その人の人としてのよさと必ずしも関係しない
- (2)技能は多様な動機から発揮されることを許す
- 人が教師の技能を発揮する動機は、真理の獲得や伝達でなくてもよい。プロとして認められたい、生徒に嫌われたくない、など
- 一方知的徳は、特定の称賛すべき知的動機によって部分的に構成されている
- ※以上の区別はアリストテレスのテクネーと徳の区別と類似(NE, book II)
- 教師の技能、実験の技能……
- 技能との結び付き
- 有徳な人は特定の知的技能を涵養しようとする
- 知的技能は知的徳によって洗練されうる
- まとめ
1.能力・才能・気性・技能 …… 徳と同じようには人としての価値に影響しない
2.能力・才能・気性 …… 自然的である(生得的/フツー)
3.能力・才能 …… 行為者性要らない
4.気性 …… 所有についての合理的把握要らない
5.技能 …… 動機が多様
2.3 結論
〔省略〕