えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

18世紀の「科学と社会」 隠岐 (2014)

現代思想 2014年8月号 特集=科学者 -科学技術のポリティカルエコノミー-

現代思想 2014年8月号 特集=科学者 -科学技術のポリティカルエコノミー-

  • 作者: 小柴昌俊,中村桂子,佐藤文隆,野家啓一,塚原東吾,美馬達哉,金森修,近藤和敬,榎木英介,粥川準二
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2014/07/28
  • メディア: ムック
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  • 隠岐さや香 (2014) 「十八世紀科学における「公共の福祉」と社会」 『現代思想』 2014年8月号 (青土社)

  18世紀フランスで科学的研究の中心を担ったのは科学アカデミーでしたが、その出版物でつかわれる「公共の有用性」、「公共の福祉」といった表現の意味は、「社会」の意味変化とも並行しつつ、「国家のため」から「市民社会のため」に移り変わっていきました。コンドルセも自らの投票行動研究を、初めは為政者への助言として位置付けていたのが、後には個々の市民が適切に判断を行うことを助けるものだとしています。
  「公共の福祉」への情熱にかられたこうした研究は、王権から解放された自由な精神の発露であると言えます。実際コンドルセは、国王と家族、その側近を自動機械に置き換えてしまえば、国費を浪費しないし自由の敵にもならなくてええやんという風刺文章を発表しています。しかし著者はここに、科学と技術により公共空間と個人の内面を規定しようという専門家支配の欲望をも読み取ります。科学的思考によって制度は適切にデザインされ、人々の意思決定は確率論にしたがう。機械のように精巧な社会の意思決定のあとには、認可のサインを印すだけの自動人形が……