えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

保守主義者と信仰ある人は帰結主義的思考をしにくい件 Piazza & Sousa (in press)

http://spp.sagepub.com/content/early/2013/06/13/1948550613492826.abstract

  • Piazza, J. & Sousa, P. (in press) Religiosity, Political Orientation, and Consequentialist Moral Thinking. *Social Psychological and Personality Science.*

・保守主義者および信仰ある人が帰結主義的思考をしにくいことを3つの研究によって示す論文です。

研究1

・著者は「帰結主義的思考尺度」(CTS)を開発しています。これは13の様々な違反(殺人、自殺幇助、近親相姦、食人、悪意あるゴシップ、盗み、嘘、詐欺、約束違反、法律違反、謀反)について、
(1)絶対に許されない(義務論)
(2)悪より多くの善を生むなら、許される(弱い帰結主義)
(3)悪より多くの善を生むなら、そうしなくてはならない(強い帰結主義)
のいづれかを選択させることで、その人がどの程度帰結主義的な思考をするかを測定するものです。
・被験者の保守性および宗教性は、それぞれCTSスコアと逆相関します。

研究2

・CTSの選択肢にある「善」や「悪」は「福利」を指すと解釈されたかもしれません。そこで話を福利に限定しないよう、選択肢を「同じ違反内での数」に注目して書き換えます。つまり、「嘘をつく事は、より多くの嘘をつかないためには、許される/しなくてはならない」といった風にします。
・ここでも、保守性と宗教性はCTSスコアと逆相関します。

研究3

・全く害のない違反でも、特に感情を強く喚起するもの(近親相姦や食人)に対しては、人は許容しない傾向にあります。ハイトはこれを、道徳判断は直観的だからだと説明します。しかし保守的あるいは信仰ある人は、直観的に思考するからではなく、「帰結主義的に思考しない」ために許容しないのではないでしょうか?
・そこで、こうした違反への判断パターン、帰結主義的思考傾向(CTS)および直観的思考傾向(「認知的反省テスト」(CRT;Frederik 2005))が測定されます。すると全体的に言って、保守主義や宗教性は、CTSスコアを媒介にして不許容判断に至っており、CRTスコアは媒介となっていない事がわかります。

議論

・保守主義者および信仰のある人は、(1)善の方が悪より多くても、(2)またより大きな悪い行いを避けるためにも、(3)そして何も悪い帰結がなくても、道徳違反を糾弾する事が分かりました。
・また、害のない違反に対する不許容には、直観性より人の道徳的なコミットメントが大きく寄与しているようです。