えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

幼児は3歳くらいで他人と一緒に何かするときには一人で好き勝手しちゃだめだと理解するようになる件 Hamann et al. (2012)

https://software.rc.fas.harvard.edu/lds/wp-content/uploads/2010/07/Hamann-et-al-20121.pdf

  • Hamann, K., Warneken, F, and Tomasello, M. (2012) Children's developing commitments to joint goals. Child Development. 83 (1), pp. 137-45.

  他人と一緒になって何かを行う場合には、一人で好き勝手しちゃだめだという一種の規範性が発生します。この「共同コミットメント」を幼児がどの位理解しているかを調べるため、ハーマンらは巧みな課題を用意しました。この課題においては、2人の子供が協同するのですが、一方の子供に対する報酬は他方の子供に対する報酬より先に与えられます。一方の2人目の子供が報酬を得るためには、一人目の子供が報酬を受け取った後でも協同を続けてくれなくてはなりません(協同条件)。共同コミットメントを理解している幼児なら、自分の報酬が手に入った後でも協同を続けるだろうという訳です。結果、2.5歳の幼児では協同をやめてしまいますが、3.5歳では続けることが分かりました。
  この結果は、利他的な動機によって説明し尽くされるものではないようです。というのもハーマンらは、一人目の子供はなにもしなくても報酬を手に入れるが、2人目の子供が報酬を得るには一人目の子供が協同を行わなければいけない、という条件(基準条件)をも用意しています。共同条件の結果が純粋に利他的動機のみによって説明されるなら、今回の条件でも同じ結果が出るだろうと言うわけです。結果としては、たしかに協同条件でも基準条件でも一人目の子供による協同は見られるのですが、しかし協同条件での協同は「直ぐに」行われる、すなわち、報酬であるおもちゃで遊ぶ前に行われることが分かりました。一方で基準条件での協同は、おもちゃで遊んだ後に行われるのです。
  この実験は、子供は3歳付近で共同コミットメントを理解し始めることの証拠になっています。