えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

子供の共同行為 Tollefsen (2005)

http://pos.sagepub.com/content/35/1/75

  • Tollefsen. d . (2005) "Let' s pretend!: Children and joint action" Philosophy of the Social Sciences 35 (1):75-97

  多くの哲学者が、共同行為が行われるためには共有意図が必要だと考えます。ブラットマンによる共有意図の分析は、相手の意図理解および高階の知識形成を主体に要請しますが、しかし心の理論を持たない18カ月の赤ちゃんも、一緒に本を読んだり、ブロック積みをやったり、会話したり、ごっこ遊びをしたり、「共同行為」と言ってしかるべき行為を行っています。
  しかしこの時期の赤ちゃんにも、様々なことができます。9-12カ月の赤ちゃんは、視線追従や模倣学習など子供・大人・対象の三者からなる指示の枠組のなかでの行動が可能になります。これが12-18ヶ月に現れる共同注意の基盤になります(Michael & Tomasello 2005)。共同注意では子供は相手と同じ方を向くだけでなく、環境の同じ側面に注目し、また相手の注意をモニターしています。また、曖昧な状況に対して大人の表情などから情報を得て対処する「社会的参照」も同時期に現れます。さらにごっこ遊びの研究からは、子供が「意図の読み取り」(目的指向性の識別)を行うことができることもわかります。
  このような能力の観点から、既存の共同意図の分析を書き換える事ができます。〔事前の意図ではなく運動に表出される意図が問題であれば、「意図の読み取り」ができる赤ちゃんなら意図理解が可能です。また共同注意においては、相手と自分が同じ対象に注意している事の「知覚」によって、必要な公開性が確保されており、高度な相互的知識は必要ありません。
  このように改定された条件は、子供の共同行為のみならず、事前の計画が間に合わない早いペースでの共同行為の説明に使えることでしょう。