えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

スウェーデンボルグの力の原子論 高橋 [1995]

  • 高橋和夫 [1995] 『スウェーデンボルグの思想』 (講談社)

1−3 『原理論』の原子論と宇宙哲学

 スウェーデンボルグの基本的なアイデアは、「無限なるもの」の発するコナトゥスが「流出」によって実在の階層を漸次的に降下していくというものです。この降下の中で束縛や限定によってコナトゥスは低減・有限化され、最後には「固い」物質を形成します。
 スウェーデンボルクによると、物質の分割は位置だけがあり大きさの無い「原初の自然点」に至ります。この原初の自然点は、「無限なるもの」と物質界の結節点にあたるもので、「無限なるもの」から無限のコナトゥス(「力」・「運動」)を受け取っています。〔むしろ、〕この「力」こそが物質の究極要素にあたります。
 当代の他の科学者が考えたように、外部からの力によって動かされる原子によって物質が成り立つのではなく、むしろ力は〔原子ひいては〕物質に内在するのだとスウェーデンボルグは考えました。曰く「力は事物に先立ち、事物は力の示現である」。
 原初の自然点は、その「純粋で完全な」運動によって、「第一有限体」といわれる渦巻状の運動形態を生み出します。この「有限体」が自身の活動により次々に他の有限体、および気体状の物質である「エレメント」を生み出いていく過程が、太陽系の発生過程です。そしてその順々の有限体とエレメント形成の果てに、我々が普段目にするような物質が形成されるのだです。このように、スウェーデンボルグの宇宙論はデカルトの宇宙論を展開したものでした。