えめばら園

Philosophier' Er nicht, Herr Schatz, und komm' Er her. Jetzt wird gefrühstückt. Jedes Ding hat seine Zeit.

計画理論のアイデア ブラットマン (1983) [2010]

自由と行為の哲学 (現代哲学への招待Anthology)

自由と行為の哲学 (現代哲学への招待Anthology)

  • 作者: P.F.ストローソン,ピーター・ヴァンインワーゲン,ドナルドデイヴィドソン,マイケルブラットマン,G.E.M.アンスコム,ハリー・G.フランクファート,門脇俊介,野矢茂樹,P.F. Strawson,G.E.M. Anscombe,Harry G. Frankfurt,Donald Davidson,Peter van Inwagen,Michael Bratman,法野谷俊哉,早川正祐,河島一郎,竹内聖一,三ツ野陽介,星川道人,近藤智彦,小池翔一
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2010/08/01
  • メディア: 単行本
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  • ブラットマン・M (1983) [2010] 「計画を重要視する」

計画

・計画には二つの意味がある:(1)一種の抽象的構造(2)それに照らして記述できる心的状態。ここでは後者が扱われる。
・どうしてわれわれは計画を気にかけるのか?
1.行為の時点で熟慮しなくても済む。
2.行為の調整のための手段になる。
・二つ目の役割が非常に重要である。相手の計画を知ると自分と相手の好意を調整しやすくなる。それは何故かと言えば、計画は賛成的態度の一種だからだ。しかし、行為に影響を与えるだけの狭義の欲求と違って、行為を制御する。
・しかし、計画は安定的でなければ調整は上手くいかないだろう。計画が安定的であるとは、
1.計画は合理性と関係のないコンディションに左右されない
2.計画は問題状況に直面しない限り再考されないという傾向がある
ということである。
・まとめると、計画とは安定的で行為を制御する賛成的態度である

調整のための要請

・調整がうまく果たされるために、計画には二つの要請が科せられる。
 1.整合性(Consistency):信念/他の計画と整合的である
  ×↑   ↓○
 2.一貫性(Coherence):目的/手段に関して一貫している。適切なサブプランの必要性
・一貫性が要請されるのは、計画が一種の部分性を持つからだ。計画の部分性といっても、(1)あらゆる状況に対して計画を備えている訳ではない〔完備性/ゆきとどき〕、(2)各行為の具体的なやり方まで計画している訳ではない〔きめこまかさ〕、(3)細部まで計画している訳ではなくスカスカである〔一貫性〕、の三つが考えられるが、ここで問題なのは3つめである。
・整合性と一貫性は合理性の制約であり、これに従わない計画は不合理である。この点で、計画は欲求とは大きく異なっている。

Reasonable/Rational

・計画の性格に応じて行為における合理性の説明は複雑なものとなる。
安定性:いつ再検討するのが合理的なのか? と言う問いが出てくる。
部分性:計画立案後に行われる実践的推論が適切なものとなるには、元の計画と適切に両立していなくてはならないという独特な構造を持つ。
・計画における熟慮の働きは、計画がもつれている時に現れる。

【事例1:もつれない】
○→○→○→○→○→●
―Plan-Execution―→
(reasonable or not ――?)

【事例2:もつれる】
○ →○ →○→●
  →○
  →○
Deliberative Decision
(rational or not ――期待効用最大化という観点から答えられる。)

考慮に基づいた決定は、より概括的なレベルおよび/またはより広範なレベルの計画の考慮〔Deliberation〕に基づかない実行と言う枠組みの中で行われる〔……〕計画は、通常の欲求のように、たんにどの選択肢がよいかを決定するのに影響を与えるだけではない。むしろ背景的計画は、どの選択肢が可能な〔relevant〕選択肢なのかを制約しているのである。

→ここから、行為における合理性には「考慮に基づいた決定は合理的だったか?」および「考慮に基づかないレベルにおいてその行動は理にかなっているという適切な基準を満たしたか」という二重の問いがあることが分かる。前者は期待効用の最大化と言う形で答えられる。問題は後者である。

理にかなった安定性

・計画の安定性とは計画を再考しない私の傾向性のことだが、安定性は計画の長期的特徴であって、私は安定性を絶えず調整している訳ではない。

計画の安定性は、私自身が持っているもっと根本的な傾向性〔性格〕によって決定されている
Rather the stability of my plan is largely determined by general, underlying disposition of mine.

・そこで、計画の安定性はいつ理にかなっているのかと言う問いに対しては、合理的選択の場合と同様に目的論的に答えられる。
・安定性の理にかなっている性――ある目的達成のためにその安定性が適切な影響を与える。
〔・従って、合理性は計画と選択だけを見て判断できるが、理にかなっている性は計画を持っているその人がどのような人なのかを見ないと判断できない。〕

Reasonable Plan Execution

・理にかなった計画の遂行とは、以下の条件がすべて満たされているもののことを言う。

  • 全ての決定が合理的
  • これまでのところうまくやってる
  • 整合性・一貫性を満たす
  • 安定性が理にかなっている
  • もつれてない

 
・以上のことから言える重要な帰結

たまたまこの個別のケースでは、再検討していたらよりよい結果が得られたのだとしても、考慮に基づかない実行は理にかなっているとしてよい。
二人の人物が、欲求・信念・計画において完全にそっくりだとしても、合理的な行動の理論にとって重要な点で異なることがありうる〔。〕〔……〕
彼らの計画が安定性において異なっていたり、あるいは安定性は似ているとしても、その安定性が一方の人物にとっては理にかなっているが、もう一方の人物にとっては理にかなっていないということが起こりうるからである。